いろんなこと 2 ショコラ・オランジェ 「はぁ、はぁっ、あっ、あん。きもちいい……」 「どれぐらいきもちいい……?」 「はぁっ、あん、すごく……」 私の部屋で、今日も私とミシェルはそういうことをしていた。 この前初めてしたときから、彼は毎日のように私の部屋に来るし、来るとだいたいこういうことになる。 彼とキスしたり、身体をさわられたりするのはすごく気持ちいいし、こういうことをしようとするとき、普段はクールな彼がちょっと甘えた感じになるのはちょっとかわいい。 それに、こういうことをしてるときって、すっごく近くにいることを感じられるから。 実際にこれ以上無理、ってぐらい近くにいるんだけど……。 「すごくじゃわからない」 そう言って彼はゆっくりと彼のものを引き抜く。 え……、もっとしていたいのに。 私は彼の顔をそっと見上げる。彼はちょっと微笑む。えっちな感じで。 そして指で私のクリをそっとなでる。 「あっ、あぁっ……」 身体中の感覚が全部そこに集まっていくような気がする。 「きもちいい?」 彼にそう言われ、私はただ首を動かしてうなずく。 「どんなふうにきもちいい?」 「あっ、あん、わかんないっ……」 「教えて」 「もうだめぇ」 「なんで? どうしてだめ?」 「いっちゃうぅ……」 私がそう言うと彼は身体を起こし、私の足を開かせる。 そしてまた彼のものをゆっくりといれる。 「あっ、あっ、あぁっ……」 私の腰が快感を求めて勝手に動く。 「動かしちゃダメ」 そう言って彼は私の腰を押さえる。 「あっ……、あん……」 動かさなくても声だけが勝手に出ちゃう……。 彼はまたちょっとえっちな感じに微笑む。 そして私の腰を押さえたまま彼が動かす。 「あっ、だめ……」 身体中の温度が上がる。 「いきそう……?」 「あっ、あっ……」 もう返事することもできない。 ていうか、いくっていうより……くる? 「あぁっ、あぁん」 きた……なにかがきた……。 彼の腕をぎゅっとつかむ。 私の身体が、身体の奥が大きく震える。 全身にものすごい感覚がひろがってゆく。 すごい……、本当にすごくて……。 中でイクってこんなにすごいの……? 「あ……、僕ももうだめ……」 遠くのほうで彼の声が聞こえる。 ぎゅっと彼に抱きしめられて、自分の身体のある場所を思い出す。 「はぁ、はぁ……」 彼は私の肩のあたりに頭をのせて息をととのえる。 「はぁ……、きもちよかった……」 そう言いながら彼がゆっくりと身体を起こす。そして私の唇にそっとキスする。 「きもちよかった?」 彼は私の髪と頬をそっとなでる。 私はゆっくりと目を開ける。 部屋の明かりが少しまぶしく感じる。 ここはどこ? 私の部屋のはずだけど……。 なぜか急にここがさっきまでとは違う世界に見える。 彼が私の瞳をそっとのぞいて優しく微笑む。 私の目から急に涙がぼろぼろとこぼれた。 「え……?」 彼が驚いた顔をして起き上がる。 「あ、あ……。ごめん! 痛かった? 僕、気づかなくて……。ごめんね……」 彼が私をぎゅっと抱きしめ、頭をなでなでする。 「ううん、痛くない……」 「痛くないの? どうしたの?」 「わかんない……」 私の目からどんどん涙があふれる。喉の奥がぎゅっと痛くなる。身体が少し震える。 「悲しいの? 怖いの?」 「わかんないの……」 「わかんないのか……」 彼は少し困った顔をする。 「泣かないで……」 私の髪をなでながら頬ずりする。 私は彼にぎゅっと抱きつく。涙は止まらない。小さく嗚咽がもれる。 「だいじょうぶだよ。僕がいるから怖くないよ」 「ずっと……?」 「うん、朝までずっといるよ」 彼は私の頬を軽くつまんで優しく微笑む。 朝までじゃ足りない。 ずっと……、死ぬまでいっしょにいて欲しい。 でも、それはたぶん無理だから……。 あぁ……、だから私泣いてるのかなぁ……。 そんなことで今さら泣いてもどうしようもないのに……。 そう思えば思うほど涙は止まらなくなる。 「うわぁん……」 私は子どものように声を上げて泣く。 「よしよし……」 彼は困り果てた様子で私をなぐさめる。 困らせたいわけじゃないんだけど……、ううん、困らせたいのかなぁ……。 しばらく泣き続けて、やっと涙が枯れてきた。 私は彼の顔をそっと見上げる。 彼がちょっとほっとした顔になる。 「おなか減っちゃった」 私がそう言うと、彼がきょとんとした顔をする。 「え……?」 「何か食べたい」 「えぇぇ……」 「チョコレートがいいな。食べさせて」 そう言って私はテーブルの上の缶を指差す。 「どれ……?」 チョコを入れてある缶をのぞきながら彼が聞く。 「どれでもいい」 私がそう答えると彼がその中のひとつを取り出す。 そして包装をといて私の口に入れる。 オレンジの香りがぱぁっと口の中に広がる。 ちょっと苦いオレンジフレーバーのチョコレート。 他にもっと甘いのもあるのに、どうしてこれかなぁ……。 だけど舌の上でチョコがゆっくりと溶けると、ちょっとだけ気持ちが軽くなった。 「おいしい」 私がそう言うと、彼はにっこりと微笑み、私の唇にそっとキスする。 「オレンジのにおいがする」 彼にそう言われて、私もにっこりと笑う。 すると彼がなにか思いついたような顔をする。 「もしかして、おなかが減ったから泣いていたの?」 「あ、そうなのかな」 そんなわけないけど、そう答えてみる。 「……だからこのうちにはお菓子がいっぱいあるのか」 彼は納得したようだ。普通納得するかなぁ……。 「ミシェルも食べる?」 「うん」 私はチョコを取り出し、包装をといて彼の唇の前に差し出す。 「あーんして」 私がそう言うと、戸惑った表情をして彼は言う。 「いいよ。自分で食べる」 「いいじゃん。遠慮しないで」 「別に遠慮してるわけじゃない」 彼は照れくさそうにむこうを向く。 こんなことで恥ずかしがるなんて、かわいい。 「じゃあ、あげない」 私がそれを自分で食べようとすると、彼はその手をつかみ、自分の口に持っていく。 そして私の指ごと口の中に入れる。 「いやぁ、指がぁ」 彼の口の中で、私の指先でチョコが溶ける。 私の指をくわえたまま彼はニヤッと笑い、舌で私の指についたチョコを舐め取る。 「おいしい」 そう言って彼は澄ました顔で微笑む。 こっちのほうが恥ずかしいと思うけどなぁ……。 次のいろんなこと 前のいろんなこと 冬の夕空 index 小説 index HOME written by nano 2008/03/20 |