冬の夕空
 3 お砂糖多め
 
 その後、ミシェルの言ったように特に何も変わったことはなかった。
 あえていえば彼が日曜以外にもうちにときどき来るようになったこと。
 そしてときどき玄関からでなく窓から入ってくること。

「どうして窓から?」
「もう寝てるかと思って」
 寝てると思うのなら来なければいいのに……とは思わなかった。
「雪が降ってたよ」
「本当?」
 窓ガラス越しに外を見てみる。小さな雪粒がふわふわと舞っていた。
「寒かった」
 彼は少しだけ甘えるように言う。
「ロイヤルミルクティー、お砂糖多めですか?」
 私がそう聞くと、彼はにっこりとうなずく。最近の彼のお気に入りなのだ。
 私は思う。
 悪魔って甘いもの好きなのかな?

 ある日、店番をしているとレオンが買い物に来た。
「女の子の好きそうなケーキを、えーっと8コかな」
「ありがとうございます。ご予算は?」
「高いのから適当に詰めて」
 相変わらず景気がよさそうだ。
「マリィちゃん、最近ミシェルと付き合ってるでしょ?」
「え、えぇまあ。たまにお茶を」
「ふぅーん」
 レオンは意味ありげに微笑む。
「あいつ変じゃない?」
「変、というと?」
「ん、ちょっと変わってるっていうかさぁ」
 すごく変わってるよ……。
「普通じゃないっていうかさぁ」
 普通じゃないよ……。
「あいつ、昔さぁ……。いや、まあいいや」
「……? なんですか?」
「いや、マリィちゃん気にするといけないから」
「もう気になってます」
「いやー、でもなぁ……。聞きたい?」
 レオンは私の目をのぞきこんでにっこりと微笑む。私は答える。
「聞きたいです」
「あいつ子どものとき、俺にキスしたんだよねー」
「……」
 聞くんじゃなかった……。
 レオンは楽しそうに笑う。
「ってウソだよー。びっくりした?」
「あはは……」
 そしていつものように「また来るね!」と笑顔で手を振って帰った。
 いまの話、本当に冗談なのかな?
 ミシェルってもしかして男の人のほうが好きなんじゃ……。
 こないだ私とキスしたとき「女としたのは初めて」って言ってたし……。
 あの後、うちに来てもお茶を飲むだけでキスしたりすることもないし……。
 私としたのはなんか単なる儀式だったのかなぁ。
 じゃあこれ以上進展することもないのかなぁ……。
 私はちょっとがっかりする。
 っていうか、そんなことよりも。
 あれ? どっちが大きい問題?

 ある夜、お風呂からあがり、部屋に戻るとミシェルがいた。
「え? えぇぇ! ちょっ、ちょっと待って! なんで!」
「近くに来たから。お風呂だった?」
 裸にバスタオルを巻いただけの格好だった。
 あわてて両手でバスタオルを押さえながらクローゼットにかけよる。
「と、とりあえずっ。服を着ます!」
「うん。あ、ちょっと待って」
「え?」
「裸見てみたい」
「え?」
 え?え?え?
 状況がよく飲み込めません。
「だめ?」
 いや、だめというか、なんというか……。
「えっとぉ……」
 言葉が出てこない。
 私の目をのぞきこんで彼はもう一度言う。
「だめ?」
「……だめ、じゃない」
 彼の緑色の瞳でみつめられると何でも許してしまうかもしれない。
 私はバスタオルを押さえる手を緩める。
 彼はそっとその手からすべてを取り払った。
 肌に少しひんやりとした空気を感じる。
 見られているのかな……。顔を上げられない。
「さわってもいい?」
「……うん」
 もうここまできたらいいでしょ……。
 彼は指で胸の下側を軽くぎゅっとつかむ。
「やわらかい」
 そうですか……。
 手のひらでそっと持ち上げるように胸全体を包まれる。ゆっくりと動かす。
 少し冷たい手。私の身体が……熱いからかな……。
 彼の指先が乳首にふれる。そっと円を描くように動かす。ため息がもれる。
 もう逃げ出したいぐらい恥ずかしい。
「下も見てみたい」
「えっ?」
 えっ? いや、ちょっと。それは。あれ?
 考える間もなくベッドの上に押し倒されていた。
 彼は顔にかかった私の髪をそっとうしろに流し、耳にかける。
 私は彼の瞳をそっと見上げる。
 彼も私の顔をじっとみつめる。
 キス……するの?
 と、耳に舌をはわせられた。
「んっ!」
 予想外の展開と感覚に思わず声が出る。
「ちょっ、やっ、まっ……て。あっ」
 じっとしていられないような感覚。
 彼の腕をぎゅっと握る。
「これ、だめ?」
「だめっていうか……。よくわからない……」
 彼は少し微笑む。
 そして人差し指で私の唇をそっとなぞってから舌を差し入れてきた。
 すごくあたたかくて、すごくやわらかい舌が私の口の中でゆっくりと動く。
 口の中が……気持ちよくて……。身体の力が全部抜けて……。ベッドに沈み込むような……、そんな感じ。
 唇をそっと離して彼が言う。
「2回目だね」
 3回目じゃないのかな……。
 首筋に軽くキスしてから彼の唇は私の胸元に。彼の髪がさらさらと私の肌にかかる。乳首のまわりにゆっくりと舌をはわせてから唇で吸い付く。舌先で乳首を転がすように動かす。
「ん……。はぁ……」
 私の口から熱い息がもれる。暖かくやわらかい唇の中で乳首がかたくなっていくのがわかる……。彼はそのかたくなった乳首を唇ではさんでからチュと音を立てて吸う。
 そして顔を上げてまた唇にキス……。
 ディープキスしながら内もものあたりをそっと指でさわられる。濡れているのがはっきりとわかった。彼はその濡れているあたりをゆっくりと確かめるようにさわる。
 そして彼がその指を少し前に動かしクリにふれると、ふさがれた唇から思わず声が出た。
「あっ……。んっ……」
 彼は唇を離し、身体を起こして私の足を開かせた。今さらながらどうして電気が付けっぱなしなんだろうと思う。
 すごく恥ずかしい……。私はぎゅっと目を閉じる。見られているのかな……、いま……。
 彼は足の間に顔をうずめ舌先でクリにそっとふれた。そしてゆっくりと舌を動かす。
「や……。あ……。うん……。あぁ……。あん……」
 すごい。
 腰が勝手に動いてしまうのが、すごく恥ずかしい……。
 身体を起こし、彼は私の唇に軽くキスした。
 もう恥ずかしくて目を開けれない。
 彼は指先でクリにそっとふれる。私の身体はビクッと震える。
「ここ?」
 耳元で彼にそう聞かれ、私は目を閉じたまま無言でうなずく。彼はゆっくりとクリの上で前後に指を動かす。
「あ、あん、あ……。ん……。はぁ……」
 もう声が止まらなくなってしまう。少しだけ早く、クリの上で円を描くように指が動く。
「あっ。やっ……。あん……。や……、いやぁ……」
「いや……?」
 手を止めないまま彼が耳元でささやく。
 いやじゃなくて……。いやじゃなくて……。
 身体の中から、感じているところから、何かあふれてきそうな。
 彼の腕をぎゅっとつかむ。
「あっ。あん。うん。あっ。やっ。あん、あぁぁん」
 身体が勝手に大きく震えた。
 全身に快感がひろがっていく。
「あぁ……。はぁ……、はぁ……。うん……」
 呼吸をととのえる。
 どこにも力が入らない……。
「いっちゃった?」
「うん……」
「かわいいね」
 そう言って彼は私の頬を人差し指でつついた。
 そして私の下唇を親指で押さえ舌を差し入れてきた。
 舌をからませた……ディープ……キス……。なにこれ……。なんでこんなに……。すごい……の?口の中が……。気持ちよすぎて……。息ができない……。
 あごがガクガクと震える。全身は力が入らないまま。彼は口の中で激しく舌を動かす。
 このまま息ができなくて死んじゃうかも……。
 そっと唇が離される。
 ゆっくり、少しだけ目をあけてみる。
 ぼんやりとした視界の中に彼の顔がすぐ近くにあるのがわかる。
 彼は私の目をのぞきこむ。
「どうだった?」
「き……ぃ……」
 言葉がちゃんと出てこない……。
「うん?」
「……きもちよかった」
「うん」
 彼は私の髪をやさしくなでてくれた。
 そしてベッドから起き上がり私のクローゼットを開けて言う。
「服着る? どれ着るの?」
 ……どれでもいいよ。

次のページ
前のページ
冬の夕空 index

小説 index
HOME
written by nano 2008/01/30

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!